トイレ考
厠人形について (土人形)
トイレの改装の工事で、あるいは、下水道工事に切り替える工事などで、前の便壷を埋め戻すとき、土人形を入れて埋め戻す風習があります。お年寄りのいる家庭では、ごく身近なこととして行われており、中には子供のおもちゃの人形を持ってきて、「これを埋めてください」といわれて、逆にこちらのほうが慌ててしまうということもあります。仕事柄、いつでも用意をしておりますが、いつも漠然とお客様にいわれるまま、お渡していたのですが、深刻な意味にとらえる人も中にはいますので、そのルーツなど調べてみました。

便壺のあとに埋めるのは、地方によって、紅、針、鏡、白粉、などを入れるところもあります。これを入れておけば、とびっきり美人の神様がやってきて、便所を汚くする悪鬼などの付け入る余地がなくなると信じられていたそうです。昔は便所掃除が圧倒的に女性の仕事であったことから、東北地方などでは、生まれたばかりの子供をつれて、雪隠参りをすると、たいそう綺麗な子になると言い伝えられています。今では、トイレ掃除する男性もかなりいますが、美人になるといわれりゃ ねぇ やっぱり奥様が掃除をしたほうが・・・・・・・・。

古く中国では、ある大変頭がよくて綺麗な女が、ある高名な人の妾になります。本妻がこれをねたみ、毎日汚い便所掃除ばかりをさせたところ、世をはかなんで死んでしまいます。天帝がたいそう哀れんで、厠の神としました。死ぬときに紫色の服を着ていたので、紫姑神(しこしん)と名前をつけたのだそうです。また中国の民家では、便所のほとりに人形を置いて祀っているそうで、箒、ちりとり、木しゃく、などを使って、人形に仕立てて、歌を歌ってはやし立て、その年の収穫を占う風習があるそうです。

このようにその土地によっていろんな風習、信仰、があり、このような人形を埋めるのは、多分北陸地方だけだと思います。家の厄除けとか安産祈願と五穀豊穣など祈願します。

写真は一般に売られている土人形。意外と若い人が買っていって、トイレに飾るのだそうです。縁起物ですし、厠人形なんて、よく考えてみれば大変珍しいものですね。

さてこの土人形、各地の土偶に源流があるといわれていまして、京都伏見が発祥地だそうです。江戸中期以後のことで、鬼板師(鬼瓦の型を作る職人)によって全国にひろめられたんだそうです。我が家は先代まで瓦製造業を営んでおり、鬼板師についてはある程度知っていましたが、このことは知りませんでした。やはり瓦の技術や京文化の影響を受け、民間信仰のルーツや調度品として、あるいは郷土人形として生まれ変わっていったことでしょう。

土人形は全国各地にあり、北陸地方にも金沢人形がありました。張子、練り人形などが有名ですが、6cmから8cmまでの小品で空洞の少ないムクで、底部にくしをさした穴があります。大正時代までありましたが、今は廃絶しています。現在土人形では、仙台 堤人形、岩手 花巻人形、秋田 八橋人形などが有名です。

わが寺井町は、言わずと知れた九谷焼の産地であります。上絵の九谷五彩が有名ですが、伏見人形は、伏見四彩と言って、丹、緑青、紫土、黄土、の四色です。そこではたと考えてしまいました。金沢人形も焼き物ですが、九谷焼と出会うことがあったのでしょうか。出会っていればすごい人形が出来たでしょうなぁ。

                
トイレ考トップ
トップページへ