武家屋敷 旧内山家

福井県大野市にある武家屋敷住宅。雪が多いためか軒先を支える頬杖は石川県でもおおく見られますが、黒くはしないですね。なぜか全体的に黒と白の建物が目立つ町。明治15年頃の建物を復元したものだそうです。

和風庭園。母屋と渡り廊下でつながれた離れの間。大正期にたてられたもので、切り妻作りの数寄屋風書院です。

何となく気品すら感じるトイレです。一尺の杉の板張りの床と、間仕切りの板戸が印象的。赤っぽくつやのある漆喰壁が上品に仕上がっています。最近昔ながらの漆喰壁をほとんど見かけなくなりました。
現代の壁工法では1度コテで押さえてしまえば、仕上がると言うのではなくて、1度塗った後壁の乾き具合を見ながら2度、3度コテ押さえをしなくてはいけないので時間がかかるのですね。それと工期の問題。1軒あたり50日程度になってしまった工期に間に合うはずがありませんね。この壁からは人工的でない自然の良さを感じます。この上からビニールクロスを張ることも出来ます。何回かのコテ押さえをするので水にも強いのでしょうね

        


個人的にもっとも気に行っているのがこの壁の色。
ワビ聚楽の壁のような色合い。何か閉じこめて外に逃がさないような雰囲気と、 障子戸も独特の暗さがあって、しかも完全に外と遮断しない感じがたまらないですね。いつかこういうトイレを作ってみたいですが、もちろん同じものを作る訳ではありませんよ。雰囲気です。


離れの便所。白と黒のモノトーン。気品のある便所です。旧内山家はトイレをきちんと保存してあります。




便所の横にはそれぞれ手水鉢が設置してあります。こうして見ますと住宅の便所の位置は常に外と家との境に設置してあります。別の言い方をすれば、庭と住まいの交点が便所の位置と言うことになり、このことがつまり トイレは文化だ ということの根本につながるのだと思うのですがいかがでしょうか。私は自然をグッと縮めた様なこのような風情を、今の住宅のトイレに生かす事を使命と考えていますが、未だ実現出来ずうろうろと歩き回っています。そしておよそバリアフリーにはほど遠いこのような風情との共存も、今から考えて行きたいですね。
 
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