富山県 豪農の館 内山邸
夏の強い日差しが照りつける日曜日。このところ連日30°を超す猛暑が続き、こんな日は家に限ると決め込んでいたが、娘が富山県下村町の「稚児舞」(国指定重要無形民族文化財指定)を見に行きたいというので出かける事にした。もとより自分の目的はトイレの取材にあるので、近くの内山邸見学を条件に恩着せがましく出かける事にした。
豪農の館 内山邸は国道8号線から県道八尾線に入ってすぐ、住宅地のほぼはずれにあり敷地面積3759坪の土地の中に440坪建物が建つ。周囲100mのほぼ真ん中,表門をくぐると有名寺院の様な建物が正面に見える。式台から入るといきなり表座敷が広がる。桐の透かし彫りといわれる欄間を左手に見ながら進むと、濡れ縁に手水鉢発見。丸く磨かれた手水鉢と広い軒庇が豪雪地帯にふさわしい。

濡れ縁の後ろに雪隠がある。トイレの保存状態が悪く、保存がしっかりしていても、物置状態になっているところが多い中で、内山家のトイレは感じが良い。トイレの入り口に殿様雪隠と書いてあったが、やはり偉い人専用のトイレだ。
お手水に土瓶をおいて、これで手を洗う。このあたりが何か現代風で、後生になって付け足した様な気がする。さしずめ高岡銅器か。
立ち入り禁止なのでよく観察出来なかったが、大便器はたぶん樋の筺。昔は松の木で作って、柿渋を何回か塗ったそうだが、たぶん漆塗りだろう。殿様のウンコを検分する人がいて名前を「薬師」というのだそうだ。富山県は薬の本場、そのような人たちが殿様のウンコを眺めている様はとても愉快だ。長い杖状のものはいわゆる「衣隠し」。「きんかくし」の語源になったといわれる。ここに衣類の裾を掛けて用を足す。高台に紙を載せてあるのは殿様専用。やはり下に置くのは失礼なのだろう。
 
石川県北前船主の館「蔵六園」の殿様便所も同じく高台の紙置きだ(下写真)。

こちらの衣隠しは別のところに用意をしてある。
トイレの造りは蔵六園の方がとてもきれいで風格があるが内山家もまた味わいがある。

内山家は1520年代
蔵六園は1830年代と310年の年代差があるにもかかわらず、窓の配置といい壁の色など、ほとんど変わらない。食べて出す場所にどれほどの意味があるか、少なくとも、しもじものトイレを見学してもわからない「もてなしの心」みたいなものがここにある。
あまりにも広大な庭園なので、個人的にいいところだけ。左端の写真。正面玄関右横にある門があまりに中国風でおもわず写真を撮った。
左の写真はお客様専用のトイレ。このトイレの奥が風呂。珍しくトイレと風呂一緒の建物の中にある。明治のバス付きトイレ。
それぞれ風呂と台所。大きな下地窓と床タイルの意匠がおもしろい。かなり新しく私の年齢でも違和感がない。この内山家はお宝も豊富で規模も北陸では1番ではないか。

大人 200円 
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